ラボグロウンダイヤモンドが初めて製造されたのは1950年代です。製造できたのは小粒なものだけで、工業用、産業用の研磨剤などの用途で使用されていました。その後、1970年代にGE(General Electric社)の研究所で初めて宝石品質のダイヤモンドの合成に成功しました。ジュエリーとしてそん色のない、品質、サイズでした。
1980年代半ばにはラボグロウンダイヤモンドの商業的な生産がおこなわれるようになりました。しかし、量産できるものはまだ品質もサイズも十分とは言えず、天然と比較できる品質、サイズで製造できるようになったのは2010年代の半ばでした。
そして、2018年に転機が。アメリカ連邦取引委員会において、ラボグロウンダイヤモンドが正式なダイヤモンドと定義されたのです。これによって、ラボグロウンダイヤモンドを、天然ダイヤモンドと同じく「ダイヤモンド」と称して販売することが出来るようになりました。これを受けて、2019年には世界的な宝石鑑定機関であるGIA(GEMOLOGICAL INSTITUTE OF AMERICA INC.)がラボグロウンダイヤモンドの鑑定書を発行するようになったのです。
これをきっかけに、一気に市場が拡大しました。世界最大のダイヤモンドメーカーであるデビアスが「Light Box」というラボグロウンダイヤモンド専門のブランドを立ち上げました。最近では、スワロフスキーもラボグロウンダイヤモンド専門のブランドをつくることを発表しました。それ以外にも、多くのブランドがラボグロウンダイヤモンドのブランドを発表しています。それによって、ダイヤモンド市場におけるラボグロウンダイヤモンドのシェアも急成長しています。最新のレポートによれば、米国の婚約指輪市場の25%、ロンドンの婚約指輪市場の50%がラボグロウンダイヤモンドに置き換わったと言われています。
人工ダイヤモンドというと、モアッサナイトやキュービックジルコニアを想像される方が多いでしょう。しかし、これらの石とラボグロウンダイヤモンドは全く異なるものです。簡単に言えば、モアッサナイトやキュービックジルコニアはダイヤモンドに似た石です。それに対して、ラボグロウンダイヤモンドはまさに「ダイヤモンド」なのです。天然ダイヤモンドとの違いは、地中から採掘された天然のものか、それとも人工的に作られたものか、というだけの違いです。
天然 ダイヤモンド |
ラボグロウン ダイヤモンド |
モアッサナイト | キュービック ジルコニア |
|
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鉱物 分類 |
ダイヤモンド | ダイヤモンド | ダイヤモンド類似石 | ダイヤモンド類似石 |
鑑定書 発行 |
可 | 可 | 不可 | 不可 |
天然ダイヤとラボグロウンダイヤモンドは化学特性、物理特性、光学特性のすべてが同一です。これに対して、モアッサナイトやキュービックジルコニアはほとんどの特性が異なります。そのため、ラボグロウンダイヤモンドは光を当てたときの輝き方も天然のダイヤモンドと全く同じですが、モアッサナイトやキュービックジルコニアは少し異なります。
これが鑑定によってモアッサナイトやキュービックジルコニアなのか、ダイヤモンドなのかを見極めることが出来る理由です。ラボグロウンダイヤモンドは天然ダイヤモンドと全く同じ鉱物なので、輝きや特性も全く同じです。従来の宝石鑑定方法では違いを見極めることは出来ません。
ただし、最先端の専門設備を使えば、光学特性以外の分析でラボグロウンダイヤモンドであることを判断することは可能です。また、一般的にラボグロウンダイヤモンドには敢えてレーザー刻印で微小なID番号を刻むことで、ラボグロウンダイヤモンドであることを明示しています。
同じ物質 | 違う物質 | |||
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天然 ダイヤモンド ![]() |
ラボグロウン ダイヤモンド ![]() |
キュービック ジルコニア ![]() |
モアッサナイト![]() |
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化学 組成 |
C [炭素] |
C [炭素] |
ZrO2 [二酸化ジルコニウム] |
SiC [炭化ケイ素] |
伝導率 | 高 | 高 | 低 | 高 |
結晶系 | 等軸 | 等軸 | 等軸 | 六方 |
モース 硬度 |
10 | 10 | 8.25 | 9.25 |
屈折率 | 2.42 | 2.42 | 2.16 | 2.68〜2.69 |
分散度 | 0.044 | 0.044 | 0.060 | 0.104 |