アイテム | リング |
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石のカット | テーパー |
石の大きさ | 合計0.38ct(5石) |
制作方法 | フルオーダー |
金属の種類 | イエローゴールド、お持ちの金属 |
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ジュエリー制作物語
【ご相談のきっかけ(想いの背景)】
2年前にお母さまを亡くされたお客様。
お手元に残った指輪の中で、「本物らしきものはこれだけだった」とのことでした。
この指輪を三姉妹で分け合い、それぞれの形として残したい――。
そんな想いを胸に、和歌山県から大阪・南船場のクィーンズジュエリーへ足を運ばれました。
以前から当店を訪れたいと思ってくださっていたとのことで、「ようやく来られました」と穏やかにお話しくださいました。
【デザインのご提案とこだわり】
お持ちいただいたのは、テーパーカットのダイヤモンドが14石留められた指輪。
石の大きさは少しずつ異なっていましたが、そのすべてを活かし、3本の指輪に分けて再構成することになりました。
テーパーダイヤは、台形に近い独特の形をしており、加工には高い技術を要します。
今回は、お客様のご希望で「ふせこみ留め」を採用しました。
縦横の長さや厚みの異なるテーパーを、均一に美しく並べるのは至難の業です。
職人が一石ずつ向きや角度を調整しながら、流れるような配置を実現しました。
地金は、お母さまの指輪に使われていたプラチナ(PT900)とイエローゴールド(K18)、ご自宅に保管されている金貨(K24)をK18に調整して使用。
思い出の素材を無駄にせず、家族の絆が確かに形となるよう、心を込めて設計しました。
【完成したジュエリーとその魅力】
完成したのは、平打リング3本。
それぞれのテーパーダイヤの大きさに合わせてリング幅を微調整し、仕上がりのバランスを整えました。
今回のリング幅は約4.1mm。繊細なラインの中に、確かな存在感が感じられるデザインです。
テーパーダイヤをバランスよく配置し、控えめながらも輝きが流れるような印象に仕上がりました。
お母さまの指輪に込められた想いと、三姉妹の絆がひとつの形としてつながっています。
ジュエリーは宅急便での発送にてお納めしました。
お受け取り後、お客様からお電話をいただき、「今、妹と一緒に仕上がった指輪を手にしています。とてもかわいらしく仕上げてもらって嬉しいです。ありがとうございました」とお礼の言葉を頂戴しました。
離れていても、三姉妹が同じ瞬間にお母さまを思い出しながら指輪を手にされている情景が目に浮かぶようでした。
さらに、お孫さまにもピンキーリングを残したいというご希望をいただき、追加でプラチナのリングを制作。
これまでのジュエリーから受け継いだ石を使い、家族の物語を次の世代へとつなぐ象徴的なリングになりました。
【ジュエリープランナーより】
ご姉妹の想いがひとつになった、温かなリフォームでした。
お電話で「とてもかわいらしく仕上がって嬉しいです」とお話しくださったお声が、今も心に残っています。
形見の指輪を三人で分け合うという選択には、形そのものよりも、想いを大切にしたいというお気持ちが込められていました。
石を均等に分けること、素材を無駄なく生かすこと――そのどちらも、職人の手仕事によって一つひとつ丁寧に形になりました。
お母さまの記憶とともに、これからもこのリングが皆さまの指先で輝き続けることを願っております。