

| アイテム | リング |
|---|---|
| 石のカット | ー |
| 石の大きさ | ー |
| 制作方法 | パターンオーダー |
| 金属の種類 | プラチナ、お持ちの金属 |




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ジュエリー制作物語
【ご相談のきっかけ(想いの背景)】
結婚19年目を迎えられたご夫妻からご相談をいただきました。長年、日常の中で身につけ続けてこられた結婚指輪は、お二人ともに衝撃などで大きく変形し、デザインも当時のままではしっくりこなくなっていたそうです。さらに奥様の0.305ctの婚約指輪は、使われないまま大切に保管されている状況でした。
「今の自分たちに合う形に、結婚指輪を整え直したい」「婚約指輪のダイヤも、いずれ何かに活かせたら」
そんな想いから、今回のご相談へとつながりました。
【デザインのご提案とこだわり】
お二人とも普段は結婚指輪を着けっぱなしにされるとのことから、センターストーン入りの指輪は負担が大きく、今回はシンプルさと耐久性を最優先にデザインを組み立てました。
素材には、ご結婚当時から19年間身につけ続けてこられた結婚指輪のPt900地金を溶かして再利用しています。「素材は当時のまま、デザインだけを今の二人に寄り添う形へ整える」という、とても象徴的なリフォームです。
奥様の結婚指輪を2.5mmの細身のラインに設定したのは、使っていない婚約指輪と重ね着けできるようにするためでした。婚約指輪を一本だけで着けると、どうしても「婚約指輪らしさ」が強くなり、日常使いから遠ざかってしまいます。そこで結婚指輪と重ねて着用し、全体のリング幅を持たせることで、フォーマルさを自然に抜き、日常にもなじむ表情へと整えました。こうして、眠っていた婚約指輪にも無理なく出番が生まれる工夫としています。
ご主人の指輪は3.5mm幅のやや幅広設計としました。これは、以前の結婚指輪が一つのリングの中に「幅が広い部分」「細い部分」「厚みが薄い部分」が混在した構造だったため、力が一点に集中し、そこから折れるように変形してしまったことが大きな理由です。
今回は、負担がかかっても力が指輪全体に分散して逃げるように設計し、あえて少し幅を持たせることで強度そのものを高める構造にしています。見た目のバランスだけでなく、「これから先も安心して着け続けられること」を最優先にした設計です。
フォルムはお揃い感のあるV字に近い緩やかなカーブ形状とし、内側には、ご結婚当時に刻まれた刻印をそのまま再現。年月を重ねた想いも一緒に受け継いでいます。
【完成したジュエリーとその魅力】
完成した指輪は、無駄のない美しい光沢と、指に吸いつくような滑らかな着け心地が印象的な仕上がりとなりました。大きく変形していた元の指輪とはまったく異なり、まるで最初からこの形だったかのような自然な佇まいです。
素材そのものは、19年間お二人の時間を刻んできた結婚指輪のPt900。姿は新しくなりましたが、金属の中には変わらない記憶が息づいています。
お二人の指輪はそれぞれ幅にも違いを持たせながら、並べると自然とペアであることが伝わる一体感があります。さらに奥様は、その日の装いに合わせて婚約指輪と重ねることで、表情の変化も楽しめる一本になりました。内側に刻まれた日付とイニシャルを見るたびに、当時の記憶と今の時間とが静かにつながっていく。そんな人生に寄り添い続ける結婚指輪が、新たに生まれ変わりました。
【ジュエリープランナーより】
今回のリフォームは、単なる作り替えではなく、結婚当時の素材そのものを未来へと受け継ぐ、とても象徴的なご依頼でした。さらに、眠っていた婚約指輪にも無理なく役割を持たせ、日常の中で自然に使っていく。その発想そのものが、とても美しい選択だと感じています。
そして、ご主人の指輪に込めた「壊れないための構造設計」は、これから先の時間を支えるための、大切な土台でもあります。
すり減ったからこそ、作り直す意味がある。形が変わったからこそ、今のご夫婦に合う形があります。素材はそのまま、デザインだけを今に合わせるという選択は、これからの結婚指輪の在り方のひとつだと思っています。
この先も、お二人の時間を静かに支え続けてくれる存在になりますように。